【相続手続きと印鑑証明書】必要な手続き、紛失の場合などを解説
遺産相続時、印鑑証明書(印鑑登録証明書)が求められることがあります。印鑑証明書は、「相続の意思が本人のものであることを証明するため」必要な書類です。
今回は、「印鑑証明書が必要な相続手続き」「印鑑証明書がない場合の取得方法、印鑑証明の有効期限、印鑑証明書の悪用リスク」などを詳しく解説していきます。
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目次
「印鑑証明書」とは
印鑑証明書の正式名称は印鑑登録証明書と言います。
印鑑証明書とは、登録されている印影が実印であるということを証明する公的な書類です。
印鑑証明書には、印影(実印)はもちろんのこと、登録した人の氏名・住所・生年月日・性別などが記載されています。※自治体によってはプライバシーの保護により記載されていないこともあります。
相続で印鑑証明書が必要な手続きは?
相続手続きの際、印鑑証明書が必要になるのは以下の6つのケースです。
- ①遺産分割協議書の作成
- ②相続登記(不動産の名義変更)
- ③金融機関・証券会社の手続き
- ④相続税の申告
- ⑤株式の名義変更
- ⑥生命保険金、死亡保険金の請求手続き
①遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書を作成する場合、相続人全員の印鑑証明書が必要です。
遺産分割協議書の作成は、以下のケースに該当すると必要となります。
- 遺言書が無く、法定相続分と違う割合で、遺産分割をする場合
- 遺言書に記載がない財産を分割する場合
- 遺言書が法的に無効と判断される場合
②相続登記(不動産の名義変更)
2024年1月に義務化される相続登記(不動産の名義変更)でも、印鑑証明書は必要です。基本的に不動産を引き継ぐ相続人だけでなく、相続人全員の印鑑証明書が必要です。
しかし、以下のケースに該当すると、印鑑証明は不要です。
- 遺言書がある場合
- 調停証書・審判書がある場合
- 相続人が1人である場合
不動産の売却時にも必要
相続した不動産を売却する場合も、所有権移転の為に売主側の印鑑証明書が必要です。共有者全員の印鑑証明書が必要ですのでご注意ください。
③金融機関での相続手続き
金融機関にある被相続人(故人)の財産を相続する場合、印鑑証明書が必要なケースがあります。
各金融機関によって、必要なケースが異なるため、直接ご確認ください。
④相続税申告の相続手続き
相続税申告手続きをする上で、遺産分割協議書を作成する場合、印鑑証明が必要となります。
⑤株式の名義変更
相続した財産に株式が含まれており名義変更する場合、印鑑証明が必要になるケースがあります。
各証券会社によって、必要なケースが異なるため、直接ご確認ください。
⑥生命保険金、死亡保険金の請求手続き
生命保険金や死亡保険金の請求をする際も、印鑑証明書が必要になるケースがあります。
各保険会社によって、必要なケースが異なるため、直接問い合わせが必要です。
相続手続きで印鑑証明は何枚必要?
相続手続きで必要となる印鑑証明書の枚数は、ケースによって異なりますがおおよそ3~4通と考えておくといいでしょう。
印鑑証明の原本は、原本還付(返却されること)も多く流用が可能ですが、原本還付後にしか次の手続きができなくなるため複数枚を取得しておくことがおすすめです。
印鑑証明書の取得方法とは
印鑑証明書の取得は本人の住民票がある市町村役場役所で行います。
取得の方法は各自治体にもよりますが、ここでは基本的な取得方法である3つのパターンをご紹介します。
① 自治体の窓口で印鑑証明書を取得する
- 印鑑登録証(カード)
- 手数料(1通につき300円程度が相場)
- 本人確認書類(自治体が指定しているもの)
自治体によっては土日でも臨時窓口を開設していることもありますので、自治体のホームページで確認するか、電話などで直接問い合わせてみるといいでしょう。
② コンビニや自動交付機で印鑑証明書を取得する
自治体によってはコンビニや自治体内に設置されている証明書自動交付機で取得することができます。
【コンビニで取得】
コンビニで取得するときは、店内に設置されているマルチコピー機でマイナンバーカードを利用して取得します。また取得の際にはマイナンバーカードの4桁の暗証番号を入力する作業もありますので、あらかじめ暗証番号を確認しておきましょう。
【証明書自動交付機で取得】
証明書自動交付機で取得するときは、基本的に各自治体から発行されているカードが必要です。設置場所については、各自治体によりますのでホームページで確認するか直接問い合わせてみるといいでしょう。
※近年、コンビニでの証明書交付にサービス移行している自治体もあり、証明書自動交付機の取り扱いを終了している場合がありますのでご注意ください。
③ 代理人が印鑑登録証を利用して印鑑証明書を取得する
印鑑証明は必要としている方の印鑑登録証があれば代理人でも取得できます。
自治体によっては委任状や代理人本人の確認書類(運転免許証や健康保険証など)を必要とする場合もあるので、あらかじめ必要となる書類を確認しておきましょう。なお、郵送での代理人取得はできません。
以上、基本的な印鑑証明の取得方法3つをご紹介しましたが、取得時に必要な書類は各自治体によって異なります。事前に各自治体のホームページや窓口で確認することをおすすめします。
印鑑証明書の有効期限とは
印鑑証明書のそのものには、使用期限は設けられていません。しかし、相続手続き際によっては、印鑑証明書の使用について、発行から〇ヶ月以内、などの期限を設けています。
印鑑登録の手続き方法
印鑑証明書がない場合は、居住地の市町村役場の窓口で登録する手続きが必要です。印鑑登録の方法は即日交付と後日交付の2つの方法があります。
手続きの際に必要となるものは、各自治体によって異なる部分があるので事前に確認しましょう。(以下のもちものでは一般的なもちものをご紹介しています)
即日交付
即日交付とは、手続き後すぐに印鑑証明書が取得できる方法です。以下2つの方法で手続きができます。
①本人による手続き
印鑑登録を行いたい本人が手続きに行ける場合は、以下の方法でご登録ください。
- 登録する印鑑
- 官公署から発行されている顔写真付きの身分証明書(本人の免許証やパスポートなど)
- 申請書(自治体によって異なるため、直接お問い合わせください。)
②保証人による手続き
顔写真のある身分証をお持ちでない場合は、保証人とともに手続きを行います。必ず本人も一緒に同行の上で、登録を進めましょう。
- 登録する印鑑
- 本人確認書類(登録する本人のもの)
- 保証人の実印
- 申請書(自治体によって異なるため、直接お問い合わせください。)
※申請書の保証人欄に保証人が自筆で記入し、保証人の登録印を押してください。
なお、保証人が同じ自治体で印鑑登録をしていない場合は保証人の印鑑証明が必要です。
後日交付(保証人がいないケース)
後日交付とは、手続き後に後日印鑑証明書が取得できる方法です。以下2つの方法で手続きができます。
①本人による手続き
保証人がおらず、顔写真がある身分証明書がない場合は、郵送による後日交付を選びます。
本人が2回出向く必要があります。
- 登録する印鑑
- 本人確認書類(登録する本人のもの、顔写真が無くてもよいが2点必要)
- 申請書 (自治体によって異なるため、直接お問い合わせください。)
■2回目
- 登録する印鑑
- 本人確認書類(登録する本人のもの)
- 照会書兼回答書
窓口で受付をした後日、照会書兼回答書が郵送されます。回答書欄に必要事項を記入し、再度窓口へ来庁して登録手続き完了します。
②代理人による手続き
本人がやむをえない事情で印鑑登録ができない場合は、代理人による手続きも可能です。
- 登録する印鑑
- 本人確認書類(登録する本人のもの、原本持参)
- 代理人確認書類(代理人のもの)
- 代理人の印鑑
- 委任状
- 申請書(自治体によって異なるため、直接お問い合わせください。)
窓口で受付をした後日、照会書兼回答書が本人宛に郵送されます。回答書欄に必要事項を記入し、改めて窓口へ来庁して登録手続き完了となります。2度窓口に来庁するため、時間を要すると知っておきましょう。
印鑑登録証(カード)や実印を紛失してしまった場合
印鑑登録証(カード)を紛失してしまったら、悪用のおそれもあるためすぐに登録印の変更と、警察署または交番に届け出がおすすめです。
印鑑証明証(カード)の紛失後手続き
各区役所の住民戸籍課住民登録係や、各出張所の窓口で、印鑑登録証亡失届出手続きを行います。印鑑登録証亡失届出手続きを行うことで、過去の印鑑登録を取り消すことが可能です。
実印を紛失してしまった場合の手続き方法
実印を紛失してしまった場合、「登録している印鑑」、「本人確認書類(運転免許証や健康保険証等)」を持参の上、以下4つの手続きを行います。
- 実印登録を行った自治体に紛失届を出す(代理人による手続き可)
- 新しい印鑑を用意し、改印届を出す(代理人による手続き可)
- 警察に実印の紛失届・盗難届を出す
- 紛失した実印を使って契約をした相手先に連絡をする
実印登録を行った自治体に紛失届を出す(代理人による手続き可)
紛失届を出すことで、印鑑証明の交付を廃止することができます。
紛失届の手続きに必要となるもの
- 印鑑登録証
- 本人の印鑑(認印)
- 本人確認書類(自治体が指定しているもの)
- 代理人が手続きを行う場合は委任状など
必要となるものは各自治体によって異なりますので、事前に問い合わせて確認するといいでしょう。
新しい印鑑を用意し、改印届を出す(代理人による手続き可)
改印届も自治体で手続きが可能です。改印届が受理されると、紛失した実印の効力が無効になります。
改印届の手続きに必要とされるもの
- 新しく登録する印鑑
- 本人確認書類(自治体が指定しているもの)
- 紛失した実印の印鑑登録証
- 代理人が手続きを行う場合は委任状など
必要となるものは各自治体によって異なりますので、事前に問い合わせて確認しましょう。
紛失した実印を使って契約をした相手先に連絡を
紛失した実印を使って契約をした相手先には、実印を紛失したため改印した旨を伝えておきましょう。
相続の手続きで印鑑証明書を使用する際の注意点
印鑑証明書を相続手続き時に使用する際の、注意点はあるでしょうか。実印が悪意ある他者にわたると、「借金の連帯保証人」「預貯金の引き出し」等々のリスクがあります。印鑑証明書だけでも、印影から実印を偽造される可能性もあるため、適切な管理が必要です。
遺産相続時に印鑑証明書を求められた場合は、信頼のおける第三者(相続専門の士業等)に任せることをおすすめします。
未成年(15歳未満)の場合
相続人が15歳未満の場合は、通常親権者が相続人に代わって署名・捺印を行います。
このとき印鑑証明書は親権者の印鑑証明書を代用して手続きします。しかし、その親権者も相続人である場合、遺産分割協議時に子との間で利益が対立してしまうため、その親権者は代理人にはなれません。このような場合は、未成年に対し特別代理人を選任します。
特別代理人とは
利益相反時に未成年の子に代わって、その子の利益を守るためにたてる代理人のことを特別代理人といいます。
通常は相続人ではない親族を特別代理人として選任されることが多いですが、特別代理人をお願いできる親族がいない場合など、専門家に依頼するケースもあります。また、未成年が2人以上いる場合はそれぞれに特別代理人が必要です。
海外移住者の場合
日本では印鑑文化はとても重要な文化とされていますが、海外では印鑑制度を文化としている国が少ないため、印鑑証明書に代わるものを発行してもらう手続きを進めるしかありません。海外移住者の相続人には署名(拇印)証明書を日本領事館で発行してもらいます。
署名証明書とは
日本に住民登録をしていない海外移住者に対し、日本の印鑑証明書に代わるものとして発行されるものです。これは申請者である本人が、署名および拇印を領事の面前で行うため、印鑑証明に代わる確かなものとして証明される書類となります。
自分以外の相続人の印鑑証明書が必要になったらどうする?
自分以外の相続人に印鑑証明書の提出を依頼する際には、重要な書類を取得するため、何のために必要なのか、どんな場面で使われるのかなど正確な目的を伝えることが大切です。また、印鑑証明書には上記(印鑑証明が必要となる6つのケース)に記述した通り、有効期限が指定されている場合もありますので、印鑑証明を依頼する方には早めに報告をし、早めの対応ができるよう配慮することが大切です。
まとめ
この記事では、遺産相続時に必要となる「印鑑証明書」(印鑑登録証明書)について解説しました。印鑑証明書は相続時の多くの手続きに必要となるため、登録がない方は相続開始後に速やかに登録しましょう。ぜひ本記事を手続きにお役立てください。
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税理士・行政書士
早稲田大学商学部卒業
相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。
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特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。
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