【速報】「令和5年度税制改正大綱」12月16日に決定&公表
令和4(2022)年10月5日、10月21日、10月26日と、政府税制調査会において「相続税・贈与税に関する専門家会合」が開催されました。また、11月18日、自民党税制調査会(会長・宮沢洋一参院議員)総会にて、「令和5年度税制改正大綱」策定に向けた検討を開始。議論が取りまとめられ、12月16日に与党による「令和5年度税制改正大綱」が公表されました。
ここにきて、にわかに本格的な検討が進められた「相続税と贈与税の一体化」、令和5年度は具体案が示されたのでしょうか?
「相続税と贈与税の一体化」がいよいよ実現へ
令和5年度税制改正大綱内での「相続税と贈与税を一体化」に関して、基本的考え方(2)に以下の記述がなされました。65年ぶりと言われる「生前贈与」に関する税制改正で、「駆け込み贈与」が加速されそうな様相となりました。
(2)資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築
高齢化に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、いわゆる「老老相続」が増加するなど、若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することとなれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。
一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
わが国の贈与税は、相続税の累進負担の回避を防止する観点から、相続税よりも高い税率構造となっている。実際、相続税がかからない者や、相続税がかかる者であってもその多くの者にとっては、贈与税の税率の方が高いため、生前にまとまった財産を贈与しにくい。他方、相続税がかかる者の中でも相続財産の多いごく一部の者にとっては、財産を生前に分割して贈与する場合、相続税よりも低い税率が適用される。
このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進する観点から、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われるよう、諸外国の制度も参考にしつつ、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築していく必要がある。
① 相続時精算課税制度の使い勝手向上
相続時精算課税制度は、平成15年度に次世代への早期の資産移転と有効活用を通じた経済社会の活性化の観点から導入されたものである。選択後は生前贈与か相続かによって税負担は変わらず、資産移転の時期に中立的な仕組みとなっており、暦年課税との選択制は維持しつつ、同制度の使い勝手を向上させる。具体的には、申告等に係る事務負担を軽減する等の観点から、相続時精算課税においても、暦年課税と同程度の基礎控除を創設する。これにより、生前にまとまった財産を贈与しにくかった者にとっても、相続時精算課税を活用することで、次世代に資産を移転しやすい税制となる。
② 暦年課税における相続前贈与の加算
現行、相続開始前3年以内に受けた贈与は相続財産に加算することとなっている。暦年課税においても、資産移転の時期に対する中立性を高めていく観点から、相続財産に加算する期間を7年に延長する。その際、過去に受けた贈与の記録・管理に係る事務負担を軽減する観点から、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち一定額については、相続財産に加算しないこととする。
③ 贈与税の非課税措置
経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、資産の移転に対して何らの税負担を求めない制度となっており、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、不断の見直しを行っていく必要がある。
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、近年利用件数が減少しており、また、資産を多く保有する者による利用が多い等の状況にある。節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、適用期限を3年延長するが、次の期限到来時には、利用件数や利用実態等を踏まえ、制度のあり方について改めて検討する。
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても、節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、適用期限を2年延長する。令和3年度税制改正大綱で「制度の廃止も含め、改めて検討」とされた後も、引き続き利用件数が低迷している等の状況にあり、次の適用期限の到来時には、利用件数や利用実態等を踏まえ、制度の廃止も含め、改めて検討する。
※出典:自民党『令和5年度税制改正大綱』
贈与税の「暦年課税方式」には1月1日~12月31日の1年間での贈与額が110万円以下なら非課税になるという基礎控除があり、そのため、「暦年贈与」と呼ばれて「生前贈与」「相続税対策」に活用されてきました。しかし、従来の税制では贈与者の死亡前3年以内に行われた「暦年贈与」に関しては、その贈与額が相続財産額に合算され、相続税の課税対象になるルールがありました。
政府税調の専門家会合では、この死亡前3年以内を5年以内にするか、10年以内にするかという議論がなされてきました。その結果、7年に延長という結論に落ち着き、「令和5年度税制改正大綱」に盛り込まれました。
死亡前の対象期間が延長されたということは、より早く「暦年贈与」を行わないと相続税を課される可能性が高くなるということになります。今後、税制改正法案が年明けの国会審議を無事通れば、3月末には税制改正が公布され、4月から施行となります。それまでに「駆け込み贈与」が増えるかもしれません。
今後の税制改正のスケジュールは、通常であれば税制改正法案が年明けの国会審議を無事通れば、3月末には税制年への変更は、改正が公布され、4月から施行となります。また、暦年課税の相続税加算が死亡前7年間へ変更されるのは、令和6(2024)年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る相続税について適用されるとのことです。
さらに気になるのは、基本的考え方(5)に以下の記述がなされたことです。令和4(2022)年に注目された、いわゆる「高層マンション裁判」でも、納税者側が国税側に敗訴しました。相続税路線価と市場の実勢価格との価格差を利用した節税スキームについにメスが入れられた状況です。
(5) マンションの相続税評価について
マンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られる。現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある。このため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態も踏まえ、適正化を検討する。
※出典:自民党『令和5年度税制改正大綱』
今後、相続税対策や生前贈与のあり方が大きく変わるかもしれません。当サイトでは、「令和5年度税制改正大綱」と税制改正の行方について、さらに詳しく情報をお届けします。
押さえておきたい相続税の知識
申告までの期限が短く、税務調査率が高く、納め過ぎが多い税金です
①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
相続税申告の期限が短い上に税務調査率が高いことが理由で、たとえ税理士でも安全に過大に申告させてしまうのが相続税です。払い過ぎの場合、税務署は指摘しません。払い過ぎたことを相続人は気づかないままです。
相続税申告を税理士に依頼するか迷われている方はこちらの記事を参考にしてください。
相続税に強い税理士とは?遺産を守り、残せる専門家の選び方
相続税はいくらかかる?無料で相続税額を計算シミュレーション
特に不動産・土地を相続する方はご注意ください
相続税は、累進課税方式です。つまり、受け継ぐ相続財産が多くなるほど負担が増える仕組みになっています。そのため、不動産などの相続財産を、税理士がどう評価するかで、支払う相続税額が大きく変わってくるのです。
当税理士法人は、国内トップクラスの相続税の還付実績で培った知識と経験から、1つ1つの土地に適した評価を早く正確に行います。こうした適正な土地評価が、大きな相続税の節税につながります。
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最大限節税できる相続税申告を
岡野相続税理士法人
代表税理士 岡野 雄志
税理士・行政書士
早稲田大学商学部卒業
相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。
全国各地の相続税申告・還付を累計5,392件(2024年10月末時点)以上手掛ける。
特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。
相続税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。