【相続税申告で通帳が必要になる?】役割や不正などについて解説
「相続税申告の準備を進めているが、通帳が必要と聞いたけどどうして?」
「税務署が通帳をチェックすることがあると聞いた。理由を知りたい。」
大切な預貯金を預けている証である「通帳」は、相続税申告時、故人(被相続人)の財産がどれだけあるのか、それを確認・証明するうえでも欠かせないものです。また、相続税申告の際の税務調査では、不正がないか通帳をチェックされることがありますが、その際、税務署から求められるのは被相続人の通帳だけではありません。
この記事では、相続税申告で必要となる通帳について、役割や不正の観点から詳しく解説します。
この記事でわかること
・申告時に税務署側に疑われやすい通帳
・誰の通帳を用意するべきか
・通帳以外に必要となるもの
相続税節税のプロ集団による
最大限節税できる相続税申告を
目次
相続税申告で、なぜ通帳が必要になる?
相続税の申告書を提出すると、税務署は申告書に不正などがないか内容をチェックします。申告書に不審な点があった場合は、税務調査が実施されてしまうおそれがあります。
税務調査後は重いペナルティが加算されるおそれもあるため、正しく相続税申告を行うことが欠かせません。そこで、相続税申告の際には、「故人の相続財産がいかに正確であるか」「相続人たちの相続分が正しく申告されているか」などを証明するために通帳を提示する必要があります。
相続税申告の際、次のようなことがあると不正が疑われます。
- 被相続人の生前時の収入に対して遺産が少ない
- 相続人の金融資産が収入に対して少ない
- 相続人の収入に対して預金の増え方が多い
- 被相続人の金融資産の減少が異常に早い
- 子どもは離れて暮らしているのに、実家の近くの銀行に預金がある
提示したのに不正が疑われる通帳とは?
相続税申告で通帳を提示したのに、不正が疑われることがあります。ここでは、不正が疑われる通帳について解説します。
最終額面だけを申告してしまうケース
通帳の最終額面だけを見ても、故人の相続財産を正確に証明することにはなりません。
たとえば、被相続人の通帳で亡くなる前の3年以内に多額(100万円等)の出金があり、相続人の通帳に、出所不明な100万円が増えていた場合、100万円は資金移動で、預け金として被相続人の遺産として計上しなければいけません。
しかし、相続税申告の際、こういった資金移動を考慮せず、最終額面だけを申告してしまうケースがあります。本来であれば、相続税申告の際、資金移動で移動した100万円は被相続人の遺産として計上しなければいけないのに、100万円はなかったことにしているのです。この場合、申告漏れとなり税務調査が来ることになります。
相続税申告時、通帳はお金の動きがわかる状態で提示する
最終額面だけの通帳では、故人の相続財産を正確に把握することができません。そのため、故人の相続財産を正確に証明するためには、必要な通帳を揃える必要があります。
被相続人が亡くなる前の3年以内に贈与があった場合、相続財産に出し戻さなければいけませんが、それ以前であれば戻す必要はありません。
※なお、令和5年の税制改正により、持ち戻し期間が3年から7年に延長されました。しかし、延長された4年間分の贈与については、総額100万円までは加算されません。
ただし、相続人名義の口座に資金移動があったけれど、実際にはお金を自由に使ったり、管理したりしていたのが被相続人だった場合は、何年前に資金移動したかに関わらず「名義預金」として相続財産に出し戻さなければなりません。
実は通帳は見られている
先のケースのように、本来は遺産として計上しなくてはいけない金額(100万円)をなかったことにしても、税務署にはバレないだろうと不正を働いてしまう人がいます。しかし、税務署は相続人の許可・了承なしに、次のことを職権で調べられます。相続人たちのお金の動きについて税務署は把握しているため注意が必要です。
相続人の許可・了承なしに税務署の職権で調べられるもの
- 被相続人名義の預金口座の残高
- 被相続人名義の預金の入出金履歴(過去5~10年分程度)
- 相続人や親族名義の預金口座の残高
- 相続人名義の預金の入出金履歴(過去5~10年分程度)
相続税申告の税務調査で、調査官は不正を見抜くため、金融機関の取引履歴などに目を光らせています。さらに、被相続人の預金口座だけでなく、相続人の預金口座もチェックし、多額の入出金があった場合などは一段と厳しい目が向けられます。
「申告しなくてもバレないだろう」という考えは、大変危険です。
相続税申告で必要な通帳とは?
税務署に不審に思われないためにも、故人の相続財産や、相続人たちが受け継いだ生前贈与など、お金の入出金がわかる通帳が必要になります。そこで、ここではどんな通帳が必要になるか解説します。
誰の通帳が必要になる?
相続税申告では、まず故人(被相続人)の相続財産がどれくらいあるか確認します。その上で、以下の通帳をご用意ください。
①被相続人の通帳
②相続人の通帳
生前贈与や相続分などを譲り受けた相続人の入金分を確認する必要もあり、被相続人と相続人、それぞれの通帳が必要です。複数の金融機関に口座を持っている場合、それぞれの通帳が必要です。
何年分の通帳が必要になる?
最新の通帳は持っているけれど、過去の通帳は持っていない場合、どうすれば良いでしょうか。通帳が見つからない場合は、取引明細証明書を金融機関から取り寄せる方法も考えられます。
過去の通帳があれば、お金の入出金の履歴をたどることができますが、一概に「何年分の通帳が必要になる」と言い切ることはできません。
税務署はどのように残高などを調べる?
税務署では、「相続発生時の預金残高」や「過去5年分の取引履歴」を調べ、不審な点があれば「過去10年分の取引履歴」を調べます。相続で通帳を確認するのは主に以下を確認するためです。
• 被相続人が亡くなる前の3年以内に贈与がなかったか
• 名義預金がないか
• 相続財産となる保険契約がないか(保険料支払い出金履歴を確認)
• タンス預金がないか
• 被相続人が亡くなる直前・当日に引き出した現金がないか
通帳以外に必要なもの、「残高証明書」
被相続人や相続人の通帳があれば、預金残高などを確認できますが、最新の通帳しか持っていなかったり、ネット銀行の利用などにより通帳を持たないというケースも増えているようです。
そこで、通帳以外に用意しておくと便利なのが、金融機関の「残高明細書」です。残高明細書を確認することで、相続人が知らなかった口座などが見つかることがあります。
相続税申告時の通帳の役割まとめ
- 相続税申告において通帳はお金の流れを正しく証明する役割がある
- 最新の通帳で最終額面を提示しただけでは不審に思われる可能性が高い
- 通帳以外にも「残高証明書」があると思わぬ口座の存在に気づけることがある
- 税務署は相続人の許可・了承なしに、職権として預金口座の残高や預金の入出金履歴などを調べることができる
- 税務調査が来たら、早めに税理士に相談する
まとめ
今回の記事では、相続税申告における「通帳」の役割について、詳しく解説を行いました。正しく財産を確認・証明し、過去の預金移動を説明するためにも通帳は重要な役割を担います。捨てずに保管しておくことがおすすめです。
また、通帳が無くても、税務署はある程度把握しているので不正は働かないようにしましょう。相続税申告後に税務調査の連絡が来たら、早い段階で税理士に相談することが大切です。
岡野相続税理士法人は、相続税申告の専門家として、全国から多数のご相談をいただいています。相続税申告後に慌てないためにも、相続税申告の前から、ぜひご相談ください。
押さえておきたい相続税の知識
申告までの期限が短く、税務調査率が高く、納め過ぎが多い税金です
①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
相続税申告の期限が短い上に税務調査率が高いことが理由で、たとえ税理士でも安全に過大に申告させてしまうのが相続税です。払い過ぎの場合、税務署は指摘しません。払い過ぎたことを相続人は気づかないままです。
相続税申告を税理士に依頼するか迷われている方はこちらの記事を参考にしてください。
相続税に強い税理士とは?遺産を守り、残せる専門家の選び方
相続税はいくらかかる?無料で相続税額を計算シミュレーション
特に不動産・土地を相続する方はご注意ください
相続税は、累進課税方式です。つまり、受け継ぐ相続財産が多くなるほど負担が増える仕組みになっています。そのため、不動産などの相続財産を、税理士がどう評価するかで、支払う相続税額が大きく変わってくるのです。
当税理士法人は、国内トップクラスの相続税の還付実績で培った知識と経験から、1つ1つの土地に適した評価を早く正確に行います。こうした適正な土地評価が、大きな相続税の節税につながります。
今後の相続に備えたい方、相続が発生した方は、遠慮なく当税理士法人にご相談ください。初回の面談相談(約1時間)を無料にて実施しております。オンラインに対応しているので全国どこでも、海外からでもご相談、ご依頼いただけます。
相続税節税のプロ集団による
最大限節税できる相続税申告を
岡野相続税理士法人
代表税理士 岡野 雄志
税理士・行政書士
早稲田大学商学部卒業
相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。
全国各地の相続税申告・還付を累計5,430件(2024年11月末時点)以上手掛ける。
特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。
相続税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。