【家なき子特例とは?】適用条件や節税例、必要書類をわかりやすく解説
家なき子特例とは、被相続人と同居していない親族でも一定の要件を満たした場合に「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができる特例のことです。
小規模宅地等の特例は適用を受けると相続税評価額が80%減額することができます。
「被相続人と同居していないから適用を受けることができない」と思っていませんか?
実は、一定の条件を満たしていれば被相続人と同居していない親族でも小規模宅地等の特例の適用を受けることが可能です。
そこで今回は、家なき子特例の適用条件や適用例、必要書類などについて分かりやすくご説明します。
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目次
家なき子特例とは?
家なき子特例とは、被相続人と同居していない親族でも一定の要件を満たした場合に「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができる特例のことです。
平成30年の税制改正では、これまでの要件に加えて下記の2つの要件が追加され、家なき子特例の要件が厳格化されました。
家なき子特例税制改正で追加された要件①
亡くなる前3年以内に、3親等内の親族または特別の関係にある法人が所有する家屋に住んでいないこと。
家なき子特例税制改正で追加された追加要件②
亡くなったときに、相続人が住んでいる家をその相続人が過去に所有していたことがないこと。
この2つの要件が追加されました。
家なき子特例6つの要件
国税庁が公表している家なき子特例の要件をわかりやすくまとめると以下6つとなり、以下すべての要件を満たす必要があります。
家なき子特例6つの要件
- 要件1:亡くなられた方に配偶者や同居の親族がいないこと
- 要件2:亡くなる前3年以内に持ち家に住んだことがないこと※日本国内の家屋に限る
- 要件3:亡くなる前3年以内に3親等以内の親族の家に住んでいないこと※日本国内の家屋に限る
- 要件4:亡くなる前3年以内に特別な関係の法人が所有する家に住んでいないこと※日本国内の家屋に限る
- 要件5:相続開始時、住んでいる家を過去に所有したことがないこと※日本国内だけではなく国外の家屋も対象
- 要件6:相続開始から10ヶ月以内に相続した土地を売却しないこと
要件1:亡くなられた方に配偶者や同居の親族がいないこと
亡くなられた方に配偶者や同居していた親族がいた場合は家なき子特例は適用できません。
亡くなられた方が独身であったり、あるいは配偶者が先に亡くなられていて、かつ同居していた親族もいなかった場合には、家なき子特例が適用できる可能性があります。
要件2:亡くなる前3年以内に持ち家に住んだことがないこと
亡くなる前3年以内に相続人が、自分が所有している家に住んでいたことがある場合、家なき子特例は適用されません。
亡くなる前3年以内に持ち家に住んだことがない場合、家なき子特例が適用される可能性があります。
要件3:亡くなる前3年以内に3親等以内の親族の家に住んでいないこと
亡くなる前3年以内に相続人が3親等以内の親族所有の家に住んでいた場合、家なき子特例は適用されません。
亡くなる前3年以内に3親等以内の親族の持ち家に住んでいなかった場合、家なき子特例が適用される可能性があります。
要件4:亡くなる前3年以内に特別な関係の法人が所有する家に住んでいないこと
亡くなる前3年以内に相続人と特別な関係がある法人所有の家に住んでいた場合、家なき子特例は適用されません。
亡くなる前3年以内に特別な関係がある法人の持ち家に住んでいなかった場合、家なき子特例が適用される可能性があります。
※特別な関係がある法人=例:親族が運営する法人
要件5:相続開始時、住んでいる家を過去に所有したことがないこと
相続が開始された時、住んでいる家を過去に一度でも所有したことがある場合、家なき子特例は適用されません。
相続が開始された時、住んでいる家を所有したことがないのであれば家なき子特例が適用される可能性があります。
※相続開始時=死亡時
要件6:相続開始から10ヶ月以内に相続した土地を売却しないこと
相続開始から10ヵ月以内に土地を売却した場合、家なき子特例は適用されません。
相続開始から10ヵ月間、土地を売却しない場合は家なき子特例が適用される可能性があります。※相続開始から=被相続人が亡くなった日から
家なき子特例が適用できる事例、適用できない事例~こんなケースはどうなる?~
家なき子特例が適用できるか適用できないか、具体的な事例を例に開設します。
ケース1:被相続人親名義の家に住んでいた
親名義の家は、3親等内の親族が所有する家屋に該当するため、家なき子特例の適用は受けられません。
ケース2:賃貸暮らしだが他に不動産を所有していて収益がある
亡くなる前3年以内に対象の不動産に住んだことがない状況であれば、家なき子特例が適用される可能性があります。
たとえば、所有の家を第三者に賃貸して自分は別で賃貸物件を借りて相続開始から3年が経過したときには、家なき子特例が適用される可能性があります。
しかし、この状況に合理性がなく租税回避行為とみなされた場合は、家なき子特例の適用ができなくなる可能性もあるので注意が必要です。
ケース3:相続開始後、申告期限まで対象の不動産を賃貸物件にしていた
不動産の用途に関して特段の規定はありません。
したがって、相続開始後、申告期限まで対象の不動産を賃貸物件にしていた場合でも、申告期限まで対象の不動産を所有し続けていたならば家なき子特例が適用される可能性があります。
ケース4 被相続人の住民票が実際の住まいと違う
たとえば、亡くなった方が老人ホームに入居していたときや自宅が2か所あって住民票のない方の家に住んでいたときです。
亡くなった方が老人ホームに入居していた場合、住民票は自宅のままということが多く、この場合、自宅は空き家状態となりますが、亡くなった方に介護の必要があり、老人ホームなどの施設に入居していた場合、以下の2つの要件を満たしていれば家なき子特例が適用される可能性があります。
- 要件1:亡くなった方が、要介護・要支援・障害支援区分などの認定を受けていて、老人ホーム等に入居していた
- 要件2:老人ホーム等に入居した後、亡くなった方が住んでいた建物を事業の用などに供していない
小規模宅地等の特例(家なき子特例)が適用できるのは、居住の中心となっていた自宅(1か所)のみです。
したがって、家なき子特例を受ける場合は、どの家に住民票がおかれているのかではなく、主にどの家に住んでいたのかを重視します。
家なき子特例適用例
家なき子特例の適用を受けるときに注意したいのは、適用できる土地の面積は330㎡が最大であるということです。
たとえば、対象の土地が600㎡だった場合は、600㎡のうち330㎡が適用範囲で、残りの270㎡は減額の適用外となります。
1億円×330㎡÷600㎡×0.8=4,400万円
土地の評価額=1億円-4,400万円なので、評価額は5,600万円となります。
家なき子特例で相続税対策はできる?
生前から対策をしておくことで、家なき子特例を活用した相続税対策は可能となります。
家なき子特例は適用されれば土地の評価額から80%減額することができます。
とても大きな節税効果となりますが、税制改正によって要件が厳格化されたことにより適用できる人の範囲が狭くなりました。
今現在、一人暮らしの親に配偶者や同居する親族がいないのであれば、生前からできる対策として、次の2点をご紹介します。
① 賃貸物件に住み続ける
いま現在、賃貸物件に住んでおり、かつ、亡くなる前3年以内に取得者・配偶者・三親等内の親族・特別な関係がある一定の法人が所有する家屋に住んでいない場合は、今住んでいる賃貸物件に住み続けることで家なき子特例が適用される可能性があります。
なお、自己所有の家屋を売却し、その家屋を賃貸物件として借りて住んでいる場合は、要件5に反するため、適用外となります。
② 引っ越ししておく
いま現在、持ち家に住んでいるのであれば、その持ち家を賃貸もしくは売却して賃貸物件に引っ越しておくことで、3年以上経過して相続が発生したときには家なき子特例が適用される可能性があります。
ただし、3年以内に相続が発生した場合は、適用を受けることができないので注意が必要です。
家なき子特例の必要書類
家なき子特例の適用を受けるためには、小規模宅地等の特例の必要書類+家なき子特例の要件を満たしていることを証明できる書類を相続税の申告書に添付して提出します。
必要書類 | 備考 |
---|---|
□亡くなった方の戸籍謄本または法定相続情報一覧図(写し) | 亡くなった方に配偶者や同居していた親族がいないことの証明として必要。 ※戸籍謄本は相続開始日(亡くなった日)から10日以降に作成されたものを取り寄せる。 |
□土地を相続する人の戸籍の附票(写し) | 亡くなる前3年以内に住んでいた場所の証明として必要。 ※戸籍の附票は相続開始日(亡くなった日)から10日以降に作成されたものを取り寄せる。 |
□相続人全員の印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押印した印鑑を使用すること。 |
□賃貸借契約書や登記事項証明書(写し) | 賃貸マンションや賃貸アパートに居住しており、持ち家に居住していない証明として必要。 |
□遺言書もしくは遺産分割協議書(写し) | 対象の土地を、特例を活用する相続人が相続していることの証明として必要。 |
□亡くなった方の戸籍の附票(写し) □亡くなった方が要介護・要支援などの認定を受けていたことを証明できる書類 (例:介護保険の被保険者証の写し、障がい者福祉サービス受給者証の写しなど) □施設への入所時における契約書の写しなど |
老人ホーム等に入所していた場合に必要。 |
家なき子特例は見落とされがち!
家なき子特例は、適用できる可能性があるにも関わらず見落とされてしまいがちなのが実情です。
相続財産のうち、土地は税金の負担が最も大きいものとされています。反面、土地の評価額は特例などの適用を受けることによって大きな節税効果を得られることができます。
今回解説した家なき子特例も、要件を満たしていれば土地の評価額が80%減額でき、税負担を大きく軽減することが可能となります。
しかし、家なき子特例は税制の改正によって厳格化された背景も伴い、家なき子特例の要件を細かく確認することを怠る税理士や、家なき子特例の細かな部分を認識していない税理士も存在するため、見落とされがちなのが実情です。
家なき子特例は要件が細かいため、判断が難しいといった場合には、相続税専門の税理士に相談することが的確な相続税対策としての得策です。
押さえておきたい相続税の知識
申告までの期限が短く、税務調査率が高く、納め過ぎが多い税金です
①被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告が必要。
②5件中1件が税務調査され、9割近い確率で追徴課税が発生している。
③過大な財産評価や特例適用の見落としが原因で、8割が納め過ぎです。
相続税申告の期限が短い上に税務調査率が高いことが理由で、たとえ税理士でも安全に過大に申告させてしまうのが相続税です。払い過ぎの場合、税務署は指摘しません。払い過ぎたことを相続人は気づかないままです。
相続税申告を税理士に依頼するか迷われている方はこちらの記事を参考にしてください。
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相続税は、累進課税方式です。つまり、受け継ぐ相続財産が多くなるほど負担が増える仕組みになっています。そのため、不動産などの相続財産を、税理士がどう評価するかで、支払う相続税額が大きく変わってくるのです。
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相続税節税のプロ集団による
最大限節税できる相続税申告を
岡野相続税理士法人
代表税理士 岡野 雄志
税理士・行政書士
早稲田大学商学部卒業
相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。
全国各地の相続税申告・還付を累計5,430件(2024年11月末時点)以上手掛ける。
特に土地の評価を得意とし、不動産相続の実績は業界でもトップクラス。
相続税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。